■ 第二十七回 紅茶の故郷(第二弾)

私の好きな本の中に『グリーン・ティーとブラック・ティー』(矢沢利彦著)という本があります。この本に書かれているロバート・フォーチュンのことを知りたくて生前、布目先生に「ロバート・フォーチュン」の本お持ちじゃないですか?とたずねてことがあります。
19世紀中葉のイギリスの自然科学者ロバート・フォーチュンが、中国を訪問し、詳しく茶の状況をレポートしていることが紹介させています。この本によると中国にはグリーン・ティーとブラック・ティーの二種類があったと紹介されています。

以前、メランジェのツアーでポルトガルに行ったことがあります。そのときにポルトガルで昔からお茶を作っていると聞きました。そこで友人に頼んでアソーレス諸島にあるサンミギュエル島のお茶を買ってきてもらいました。それがオレンジペコーという紅茶とハイソンという緑茶でした。
おいしいとはとてもいえませんが感動です!ヨーロッパで!それも最初にお茶を紹介したポルトガルで!清朝のころの辮髪頭の中国人が2人写真で紹介されていてお茶の道具なども紹介されていました。1662年にキャサリンが持っていった時代とは2世紀近くの時が過ぎていますがうれしくポルトガル語のお茶の記事をお願いして訳してもらったりと大騒ぎしたのを覚えています。

正山小種とLaspang Souchong、この名前にもいろいろな説があり、謎がいっぱいのお茶です。私が始めてフランスでタリー・スーチョンというお茶を飲んでこれはなに?名前が違うがイギリスのラプサン・スーチョンとよく似ている?と悩んだことがあります。20年も前の話です。そういう意味で私とラプサン・スーチョン(私は大変好きなお茶です、燻製香のことです)
しかしいろいろお茶を学んでいくうちに龍眼香のお茶を知り、松煙香を知り、外山小種を知っていくと、謎がますます深まりこれは探検するしかない?と思いました。第2回目では、ずーっと昔から特別な作り方を変えていないという紅茶の作業場を紹介したいと思っています。ただしまだまだ疑問は多く、その上時期が違うといわれ松の煙を入れ込んで薫煙香をつけているところは見ておりません。ぜひ見たいものですね!   

まず、工場は会社の建物のすぐ近くにあります。
6年前は、木造の製茶場の横に小さなティスティングするところがあったのですが、ここ数年で別に会社の建物ができたようです。製茶場は、以前と同じ木造の建物でした。



 

製茶場の前に茶葉を図るところがあります。この籠は生葉を運んだり、萎凋した葉を揉捻機まで運んだり、この中で揉捻した葉を発酵させたりいろいろな用途に使われます。



 
道路側から見ると川の向こうに青楼とよばれる木造の製茶工場が見えています。
この川は武夷山脈を源流として武夷山の星村まで流れ大きな川へとつながっているそうです。
大変澄んだ岩の多いきれいな清流です。



 
工場です、小さな「青楼 −チンロウ」と呼ばれているこのあたりの紅茶を作る独特の建物がありますがこの大きな建物にもそれと同じ設備があります。これを「青楼」と呼ぶのかどうかは知りませんが、一番最初に桐木村に来たときは、村の中でもっと小さな木造3階建ての「青楼」を見ました。

この建物は1階の下に薪の炊口があります。1階部分の床に薪の熱を調節する溝があります。この後の写真で説明していきましょうね!2階は萎凋するところ。3階は以前9月に行ったときにはたくさんの女性の方がお茶の選別をしていました。



 

建物の側面ですが、レンガと瓦屋根とっても不思議で思わず写真を撮ってしまいました。


 

たくさんの薪です。これは松の煙の香りをつけるための木ではありません。この江さんの製茶場では1階でウーロン茶も作っています。それも薪の木で乾燥させたりしています。問題の松の香りのするLaspang Souchong (ラプサン・スーチョン)はどんな 木で香りをつけているのでしょうね!




 
ここは建物の裏にある薪をくべて火を炊くいり口です。6年前はここは火の後がなかったので本当に今もつかっているのかな?と思っていましたが5月にいくとこのように製茶をしているときはこのように使っていました。人が背を低くして入れる程度の高 さが木造の建物の下にあります。



 
建物の一階部分の床です。このように溝が縦に走っていて底を外の火の炊口から暖かい空気が流れるようになっています。その上にレンガが並んでいます。これは並べている隙間を空けたりつめたりして間隔を調節し温度をコントロールするそう です。
もともと武夷山は高地のため温度が低くお茶を発酵させるのに加温が必要でこのような独特のお茶の製茶用の建物を使っているそうです。初めて見たときは大変感動しました。お茶を作るのに知恵を働かせ工夫して作られる!ここで作られた発酵茶をヨーロッパに運んで飲み始められたと思うと人のお茶に対する熱意は飲む人も作る人も昔からすごいな〜〜〜とおもわず感激!!

 




 
この1階の天井の下に棚があります。この棚の中に直径1mぐらいある竹製の浅い笊にお茶を入れて乾燥させるそうです。2階の床下というか1階の天井下というか上手に貴重な燃料を利用した設計ですね!


これから、製茶の状況を写真で紹介します。
 

そこから移動しまして2階に上がります。建物にはテラスのような部分があります。ここをうまく使っています。半日陰のところでそこの上に1芯3葉で詰まれた茶葉を屋外萎凋します。これはインドやスリランカの紅茶ファクトリーでは見たことがありません。烏龍茶を作るときは香りを作る行程として大変意味がありここの紅茶が独特の龍眼の香りがするのは土地の持つ土や環境だけでなく製茶にも関係あるように私は思っています。



 
屋内萎凋、2階の床に竹で編んだ筵というか茣蓙というか敷物を床に引きます。そのうえにお廊下のベランダで屋外萎凋した茶葉を広げます。ここは1階ほどではありませんが加温されているので温度が調整されていてドアを開けて写真をとると曇ってしまいます。念のために!ここの特別保護区の中では木を切ることは許されておりません。ですから他の場所からトラックで木を運んできます。むかしから武夷山は竹と松が多く生えているところだったそうです。ですから寒いで松の木で加温して発酵させたそうです。



 
この程度まで萎れたら揉捻機にかけます。



 
揉捻機。3回揉捻しますが、まず1回目軽くゆっくり揉みます。そのあと玉解して塊をほぐします。また2回目の揉捻をします。


 

揉捻が終わると10〜15分静かに置きます。


 
発酵。棚や笊で広げて発酵させるのだと思っていましたが、この籠の中で発酵させます。思わず真ん中に穴を開けてあるので空気が真ん中からも触れて発酵を促すのですか?と聞いたらそうですと返事をいただきました。ちょっとはじめてみた発酵の仕方です。



 
乾燥機へ!



 
乾燥機は1階の建物の前の屋内にありました。その横にシフティング、大きさを分けます。
このように大きさ別に籠が並び分けられてゆきます。



 
選別。



 
出来上がった紅茶の中に大きな葉や色の薄い葉、そして何かほかの植物や茎が入ってないか人間の眼で見て取り除く他作業です。大変な作業です。日本やスリランカでは光センサーでいろの濃い薄いで選別したり、水分の含有量で静電気で分けたりする機械を使います。以前9月に来たときは2階、3階のあらゆる廊下にたくさんの女性が遠くの村から働きに来ていました。紅茶の作り方も仕上げも昔からの伝統方法を維持しているそうです。


いかがですか?少しは紅茶の故郷のお茶知っていただけましたか?

私は、ますます謎が増えまだまだ私の旅は続きそうです!



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