■ 第二十五回 オーベルニュ地方ハーブの旅

リヨン駅
今回のお茶の旅は、ハーブティです。2005年9月7日に出かけました。

1976年、蓼科でハーブを仕事にされている萩尾さんにお目にかかったのがきっかけでハーブに興味を持ち八ヶ岳によく出かけ、いろいろハーブについて教わりました。

彼女にパリのハーブ関係の店を教わりフランスに出かけることになりました。このころモーリス・メッセゲのハーブティが日本に出回りだしたころでフランスに関心をもちました。

1994年にメランジェのツアーのガイドをしてくださったパリの山田さんから、おいしいハーブティがあるとプレゼントしていただいたのがオーベルニュ地方のオーガニックハーブティだったのです。




フランスの新幹線TGV
まずはパリのリヨン駅からTGVでリヨンまで。

このリヨン駅は歴史的な建物で中には、トランブルーという有名なレストランがあります。

ここからリヨン、マルセイユと南のほうに出かけるTGVが出発します。日本の新幹線と違い向かい同士の席でないのでちょっとすわり心地がよくないです。リヨンに着きすぐにレンタカーをかりてオーベルニュ地方へ!



唯一のレストランホテル
3時ごろにパリを出て、リヨンまで。そして車でサンティティエンヌをとおり、ルピュイの町まで。そこからが小さな町ばかりでだんだん空気が変わってきます。ここまでリヨンから170kmです。

よる9時ごろにハーブの生産者に一番近い村 Langeacがあり、唯一のレストランホテルに泊まりました。

そのホテルの周りを朝お迎えが来るまで散歩をしましたが、村の入り口から出口まで観光バスを10台くらい並べたら村が終わるくらいの小さな村でした。



ロッシェさんのお宅
朝、11時前に生産者のロッシェさんが迎えにきてくれ、その後を車でついて行くことにしました。

20分ほど走ると突然前が狭い道になり、普通車のレンタカーで大丈夫かな?と思うような狭いくねった道をどんどん下っていきました。 これ以上道がないというところが彼の農場です。

ここで車を降り今度は歩いて坂をあがっておきます。そこに突然素敵な石の建物は3つ建っています。

電話で打ち合わせをしたときにホテルでなく家に泊まるように言ってくださったのですが、取引は長くても訪問するのは初めてなので今回は遠慮しましたが機会があれば今度はぜひ泊まってみたい素敵な建物です。



自宅前の葡萄
真ん中の白い建物が自宅でこの家の前には葡萄が植わっています。

聞くところによると、この土地は以前はワイン用の葡萄を生産していたところをロッシェさんが買って、ハーブや野菜の生産を始めたそうです。

もう9月の始めなので大きくなりかけの葡萄がぶら下がっていました。



美しいオーガニックトマト
この畑ではハーブだけでなくいろいろな野菜がオーガニックで育てられ自給自足で暮らしています。

そのなかでもこのトマトは販売用でハーブの乾燥するところでドライトマトに加工するそうです。

とてもみずみずしく生でもおいしそうですね!



農園の羊とシープドッグ
この生産者は、野菜だけでなく羊を飼っていますが、とてもかわいいビゼーという品種だそうです。

35匹の羊を2匹のシープドッグと1匹のハンタードッグとともにこのヴァレーで暮らしています。

この若い方のシープドッグは、ロッシェさんの掛け声ひとつですばらしい仕事をします。

ここまで行くと羊のほうがこちらを向いて出かける用意を始めます。



皆で、おでかけ
ぞろぞろと35匹がペットのようにロッシェさんご夫婦と、同行した馬可波羅クラブのスタッフである川田さんの後を並んで畑のほうに出かけます。

お尻の可愛い後姿です! 尻尾が可愛いでしょう!!



マイペースなビゼー
34匹の羊達はシープドッグとともに草を探しに行ってしまいましたが、1匹だけマイペースな羊が残りました。

昨年11月、馬可波羅倶楽部のHPのハーブの生産者の説明用に写真を送っていただきました。そのなかの写真の1枚に「ビゼー」と横に書いてありました。そのときはペットだと思ってたのですが、今回来てみて35匹も入るので家畜であることがわかりました。勝手にロッシェさんがカルメンの作曲のビゼーから名付けたのでは?などと!!

しかし彼に残った1匹の事をたずねると「ビゼー」といわれたので、「この羊の名前ですか?」と聞いたら、羊の品種だということがわかりました。35匹の中に1匹だけ違う種類がいたので34匹がすべてビゼーとの説明で知りました。変わった品種の名前で勝手に一匹の羊の名前だとすっかり思い込んでいました。

シルクロード、トルコ、モロッコデミル羊とイギリスやプロヴァンスのヨーロッパの羊をいろいろと見て、その違いなどは知っていましたが、このビゼーは初めて見た羊の種類です。



ヴェルヴェーヌ畑
羊は犬に任せてハーブ畑へ! 

農薬や除草剤を使わないので雑草除けと乾燥地帯なので水分維持のためハーブの足元は黒いビニールをかけています。

ここはヴェルヴェーヌの植えてあるところです。

ルピュイ(ここから5〜60km)の町で有名なリキュール PAGESがあります。このリキュールもヴェルヴェーヌがベースのリキュールです。

この地方のヴェルヴェーヌは本当に香りが良く、揮発性の強いレモンのような香りがお茶を飲むとき気持ちをさわやかにしてくれます。



香りの良いヴェルヴェーヌ
こんなに元気で虫にもかまれずすくすくと育っています。

ハーブは雑草と同じでよく育ちますが、気候や土が合わないと香りもあまりしないし、薬効成分も乏しくちょっとがっかりするハーブがあります。

この生産者のものはここ10年私が購入している限りでは本当に香りが良くお茶にしたときも色が大変きれいです。

この畑にいるだけでもアロマセラピーを自然に体験できるほどすがすがしい香りが立ち込めています。



ミント
これはミントです。

私が輸入しているのはミント・ヴェールというグリーン・ミントですが、ちょうど収穫期が終わっていて写真のものではありません。

これもしっかりすくすくと育っています。日本で育ったものと違いオーガニックためか、すくすく育っています。



モーヴ
モーヴ(ウスベニアオイのことです。)

これもいつ送っていただいても鮮やかな濃いブルーで、お湯を入れると大変きれいなブルーのハーブティになりますが、時間がちょっと過ぎると淡いグリーンイエローのハーブティになります。

ウスベニアオイはこれからの時期 のどを潤わせ、扁桃腺や喘息、気管支炎に最適だそうです。



ローマンカモミール
9月でもまだまだきれいに咲き続けているのがローマンカモミールです。

乾燥している花を日本でお湯を注ぐと生の花のようにきれいに戻ります。驚くほど綺麗です。

ハーブティはハーブティ、アンフュージョン、ティザーヌとも呼ばれ、ヨーロッパでは、お茶が伝わるずーっと前から、使われてきた薬草茶です。

香りの効果と飲用による薬理効果の双方が楽しめることが特徴です。

有効成分はハーブによって違いますが、共通しているのは抗酸化作用です。

昔から先人の知恵はすばらしいですね!



ソーラーシステム
この生産者のハーブティがどうしてこんなに良質なのか今回の訪問でよくわかりました。

それは大変注意深く丁寧に作り、乾燥作業も仕上げも本当に丁寧です。

これは、建物のひとつで乾燥室です。

屋外にガラスでこのようなソーラーシステムを手作りで考案しています。

ガラス2枚のしたにはトタンがひいてあり空気が温まるように工夫されています。この空気が40度程度に温まるのを中に引き込んで利用しています。大変エコで感激しました!



ソーラーシステム
2階の窓から空気を引き込んだ中からの写真です。

このホースで外のガラスの中の暖まった空気を中に入れ込んでいます。

これをハーブやドライトマトを乾燥させるのに使っています。



乾燥棚
これが乾燥棚です。

ここの一番下にホースを差し込んで下から上に利用しています。

本当にスローフードをスローな設備で丁寧に良質に! 脱帽しました。



ハーブの乾燥
この棚の底に金網がはってあります。

そこに1段ずつにこのようなオーガンジーを引いてハーブをあまり重ならないように広げしたから暖かい空気を使って乾燥させています。

通常よく茎もついたまま乾燥させますがここでは葉をはずした形で広げて均等に乾燥するように並べてありました。



ルピュイの町
昼食を自家製の野菜で作ってくださり、羊は大変おいしかったのですがこれもここで育った羊だそうです。

さすがワインは購入品だそうですがここはワインもおいしい産地です。

夕刻までゆっくりいろいろな話を聞きながら食事をとり、もって帰るハーブを詰めるのを手伝いこの写真の町、ルピュイを通ってリヨンまで車で帰りました。たった1泊2日の旅でしたが生産者の顔が見えるお茶を販売できることの大切さを感じさせられるいいお茶の旅でした。

最後に生産者のロシェさんの紹介をしておきましょう! この畑は夫婦2人で、羊飼い、80種類ものハーブ製造、農作物収穫などをこなすため年中忙しく特にハーブの製造は手間かけて行なわれるため多いものでも10Kgに満たない為、おもに仏国内で消費されるほか、英国とこの日本に出荷されているだけです。フランスのオーガニック認定団体ABマークの認定を受けている優良な生産者です。

メランジェでは、数種類だけ取り扱っていますがとくに量が大変少ない菩提樹の花はこの生産者の70%を分けていただいております。人間に良い環境は植物にも良いとここでも感じてきたお茶の旅でした!





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