■ 第二十二回  '05 ヴェトナムの蓮茶の旅

以前より憧れのベトナム・ハノイの蓮の花を訪ねて旅をしてきました。
10年ほど前に、あるお料理の店から,「隋園食単」(ずいえんしょくたん)という中国の清の時代の袁枚という方が書いた本に蓮茶のことが書かれているのですがどんなお茶でどんな香りがするのでしょうか?と聞かれたことがあります。この本は乾隆帝の時代に料理法を記した書で、「随園」とは彼の邸宅の名で、その随園におけるぜいたくな生活や料理のレシピが書かれています。この本を購入し読んだのですが、ここに書かれている蓮茶にはめぐり合うことが出来ませんでした。数年たって、ある日JALの機内誌に書かれているベトナムの蓮茶の記事を見つけました。ベトナムのハノイで年配の女性がその本に書かれているように蓮の花のつぼみに緑茶をいれてこぼれないように絹の糸で蓮の花のつぼみを結んで香りをつけている写真です。それでベトナムに行きたくてここ数年何度か計画するのですが、SARSなどで断念しあきらめていたのですがご縁あって今年行ってきました。



ベトナムの首都のハノイにある西湖
大変広くちょっと、中国の西湖を思い出しました。
対岸にはビルが立ち並び政府が所有しているこの湖も宅地に埋め立が進みて、蓮の田んぼがだんだん小さくなっているそうです。蓮茶に使う蓮の花が年々少なくなっているそうです。



ベトナム ハノイの蓮田
ベトナムのハノイの蓮が大変香りがよく蓮茶を作るのに最適で、どの蓮でも作れるわけではないそうです。7月4日に私たちは生産者の方にお願いして蓮田に連れて行っていただきました。ここも西湖の端のほうで向こうにビルが見えています。私が湖畔にある桟橋のようなところに着いたときは前に蓮の葉だけがたくさん茂っているだけで、人の姿などありませんでした。しかし10〜15分程度たつとどこからか、蓮を取る船が帰ってきます。籠のように編んだ船でなかの水をくみ出しながら帰ってきました。男性がほとんどで一人年配の女性の姿も見受けました。



籠の船
まるでおとぎ話の一寸法師のお碗の船を思い出すような籠の船です。船が近くに来ると蓮の花が一杯積まれていて湖畔ではあまりつぼみが見当たらなかったのですが湖の中のほうはまだたくさん咲いているようです。
ここハノイでは、6月おわりから8月一杯が蓮の季節でとくに7月の蓮の花で作るのが最高ときいて今回は7月に出かけました。早朝5時頃から蓮取りに出かけ6時頃には戻ってくるそうです。



ピンクの花がとても鮮やか
花は仏さんに飾るのは茎が長く、お茶の香りに使われるもの茎を20Cm程度で切って摘まれています。蓮の花のしたに葉を引いてまた上から蓮の葉で覆ってきます。花の香りを本当に気を使って丁寧な取り扱いをしていました。たまたま行った日が旧暦で仏様に蓮を祭るときだったそうでたくさん長い茎がある蓮が船に乗っていました。



1つの山100本の蓮の花
桟橋の上にたくさんの蓮が山積みにされていますひと山100本だそうです。1Kgの蓮茶を作るのに1000本〜1300本の蓮の花のガオセン(蓮のお米という意味)と呼ばれているおしべが必要です。昔からいろいろな作り方をそれぞれの店で作られ受け継がれているそうです。ここでは00さんは、300本とかxxさんは500本と前もって注文した分を引き取りに行きます。この蓮田の蓮を取り扱いできるのは5軒の人たちだけが取る権利を政府から与えられ、年間の費用を納めているそうです。



小さな花びらたち
ここベトナムのハノイ近郊で採れる蓮は大きな花びらの中に小さな花びらがたくさんあります。これがおしべを守り特に香りが強くはす茶に最適です。真ん中の白いのがガオセン(蓮の米)と呼ばれています。この白いおしべで薫香します。



これは何に見えますか?
この写真のガオセンは今朝湖畔で400本買った蓮のおしべです。丁寧に真ん中の黄色いめしべに触れると苦くなるので丁寧に1本づつおしべをはずして集めます。蓮の花は7時から8時頃に開き始めこの頃が一番香りが高いのでこの時刻に作業をします。



蓮茶を作るのはとても大変!
はずしたおしべ、そしてベトナムの緑茶(代表的な茶の産地のタイグェン地方)とこのおしべを真ん中のお鍋に重ねてなんども繰り返し重ねてゆきます。おしべと茶葉を混ぜ紙の蓋をして1日置いておきます。翌日400Gずつ中にトレ−シングペーパーが引かれたクラフトの袋にいれしたから炭火で暖めた金属のトレイにおいて乾燥させます。炭火感想は1日8時間2日繰り返します。 そしておしべを取替え乾燥します。おしべの取替えを5回繰り返すそうです。 ですから香り付けに15日間かかるそうです。



蓮の花の用途は多様
蓮の花のめしべは漢方薬の店に、蓮の花びらは寺院やお葬式に使うために業者が引き取っていきます。 蓮は根っこはレンコンとして大変健康に野菜。蓮の真ん中に出来る蓮の実は大変美味しいアジアンデザートに欠かせないのとお月見の月餅の餡としても親しまれています。蓮の茎は最初書きました『隋園食単』にお酒を飲むシーンが出てきます。花、実、実の中の蓮芯といって漢方のお茶に使われます。蓮は本当に優れた植物ですね!天然の花から香りの付けられた蓮茶はいまや幻の蓮茶と呼ばれるほど少なくなり貴重です年間100Kg〜150Kg程度しか作れないそうです。ぜひハノイの蓮で香りを着けた蓮の花茶を試めしてみませんか?



知れば知るほど奥が深いです!
蓮茶に使われる茶葉は、大きく分けて2つの緑茶があるようです。タイグェン地方の緑茶とハジャンのお茶です。ハジャンのほうは中国に近く大葉種ですので2〜3年ねかせて蓮の香りを着けたりするものもあります。

ベトナムは、緑茶の産地で有名ですが黒茶やウーロン茶もたくさん作っています。ベトナムの方は緑茶を飲みますがこの写真のお茶はタイグェンのお茶で1kg10$前後です。ベトナムの収入から考えると高価なお茶で多くの方は生の葉を朝市場で買って少し茹でて茹で汁のお茶を飲みます。今回の蓮茶以上に私には新しい発見で聞いたときは野菜の茹で汁を想像して青生臭いかと思っていましたが実際飲ませていただくととても美味しくて感動しました。北のほうだけの習慣と聞きましたが美味しくて『目からうろこ』です。

お茶は本当に面白いですね!



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