■ 第七回 特別編 モロッコ アルガンオイル II

特別編 第二回は 2003年11月モロッコの南のほうにあるアルガンオイルの産地タマナール村を訪れた旅です。(第一回はこちら

モロッコの大西洋の海沿いの町、エッサウイラ、この町は昔、モガドールという名のポルトガルが統治していた町で航海時代に大変重要な町でした。

前回紹介した タルダントの町はマラケシュから山脈を越えた山の中の産地でしたが、今回訪ねたタマナール村は、このエッサウイラの町から車で1時間程度山のほうに走った所にあります。

この村にある「AMAL」と言うアルガンオイルを作る女性の協同組合を訪ねてきました。" AMAL " アマルというのは”希望 ”という意味だそうです。

2001年 出会ったアルガンオイルに惹かれて2年間続けてアルガンツリーの産地を訪れるなど夢にも思いませんでした。この「AMAL」をずーっと見守っている素敵な女性にあったのが今回の旅の報告です。 



Pr.CHARROUF (ズビタ シャルーフ教授)

モロッコの首都はカサブランカでなくラバトにあります。

ラバトのマホメット5世大学の中にZoubida Charouf-Chafchaouni教授が働く「the Faculty of Sciences」があります。

教授はアルガンツリーを守るため、この特別な木にかかわって12年になるそうです。

エアー モロッコの 機内誌にたまたまアルガンツリーの記事がでていましたが、これを読んで、この素敵な教授に逢いたくて日本を出る前に連絡をし、教授の研究所でお目にかかることになりました。

ーー以下の文章は飛行機の機内雑誌より転用ーー
この2000万本のとげのある植物アルガンツリーは、モロッコ中西部サフィからサハラ砂漠周辺の範囲だけで自生する木です。しかしこの古い木は、今や絶滅寸前。農水省によると、このままでは2007年までにアルガンツリーの35%が枯れてなくなってしまう危険があるとしています。 砂漠化の進行を防ぐ働きもあるアルガンツリーは、非常に貴重な資源でもあります。この木は捨てるところがありません。木は炭を作るのに利用できるし、葉や木の実はヤギの餌。そして木の実からとれるオイルは、薬として、台所の調味料として非常に多くの用途を持つ万能オイルです。

その価値に気づいて、木を守るためCharouf-Chafchaouni教授は、まず、なんとか地元の人達が、アルガンツリーを保存することに興味を持ってもらおうとしました。そして1996年、アルガンオイルを製造する女性だけの協同組合が発足しました。しかし当初、男性はこの団体を快く思わず、理解してもらうには非常な努力が必要でした。でも、この組合の目的が女性を解放することではなく、さらに利益が自分の家にも入ることに気づくと、夫自ら自分の妻に仕事をまわしてほしいと頼みにくるようになりました。それ以来、他にも女性だけの協同組合がTidzi と Mestiに2ヵ所作られ、さらにTiout とAit Bahaにも2ヵ所、今年の終わりまでにできる予定です。どの協同組合も最初は従業員も少なく小規模でしたが、注文が急激に増加したため、今では200人の女性がこの組合の仕事をしてお金を儲けています。この仕事で得られる収入は、月に500から1,000ディルハム。月によって収入は不安定ですが、それでも子ども達を学校へ行かせたり必要な学用品を買う分はまかなえます。女性としての尊厳も得られるのです。

組合では教育的な面でもサポートしており、読むことを教える週間単位のコースや、アルガンツリー経営についてのミーティング、さらにコンピュータやマルチメディア、e-コマースといった勉強会まで開催しています。その組合の女性達は、各自で年に10本ずつアルガンツリーを植える活動をしています。  

Pr.Zoubidaがもたらしたこの功績を本人は、モロッコの現状を見ようと、勇気をもって自分の研究室を去った結果がこのようになり、非常にうれしいと控えめに話しています。

(エアー モロッコの 機内誌 10月号 2002年 より)


研究所でいろいろ教授が今まで研究してこられたアルガンの木の話、そして「AMAL」のことをお聞きしました。

その後、心暖かくご自宅でお茶をおもてなししてくださり、ラマダン(イスラム教徒は毎年イスラム暦の9の月(2004年は10月15 日〜11月13日頃)に日中の飲食を絶つ宗教行事)中というので恐縮しながら私一人おいしいミントティを頂きました。



TAMANAR村にある 「AMAL(希望という意味)」の建物
このタマナールの村の生産組合は73人で、年齢制限なしで十代の若い女性から上は80歳ぐらいの人も働いています。

ここでは主にこの女性たちがアルガンの実の皮をはずし核を出す作業を行って賃金をいただいています。

アルガンツリーの35Kgの実で1Kgの核がとれる。2kgの実から1Lのオイルが作れます。アルガンの木1本で1年間70Kgの実が取れます。ですから一本で1Lのオイルが製造できます。

「1人、1日2Kg平均作業をする。約1Lのオイルが朝から晩まで働いた結果出来上がる。。。」

大変な作業です。

ここではキンダーランドがこの組合の作業場の隣の部屋にあるため、子供を預けて働けます。またここでは、15日に一回作業する女性のための勉強会を開いているそうです。最初16名からスタートして今では希望者がたくさん待っていてただいま100人の人が待っているそうです。



木から採った青いアルガンの実と熟したアルガンの実


アルガンの実の大きさや形はいろいろです。

この熟した実を落として乾燥させます。

昔からベルベルの人たちは、アルガンツリーの木の実を収穫して絞っています。

ヤギが木の実を好んで食べるため、放牧しているヤギがこの実をの外だけたべて胃の中から種を戻します。木の実も利用してなかにある仁核を種を石で割って炒りつけ油を絞って使っています。

この「AMAL」の組織ではヤギの胃」から戻したものは獣臭がするので全て収穫したものだけを使っています。

この木は大変暑さに強く50度の猛暑にも耐え年間雨量200ml以下でも育ち7年間雨が降らなくても生き延びることができるそうです。

地下7mにも根を伸ばし水を探すそうです。このおかげで水を保持でき周りの砂漠化を妨げるために貴重な木だそうです。



6月から9月の夏の間にアルガンツリーの果実を集め、家で天日干しにてから保存します15日から20日間の間、天日干しで乾燥させたオルガンの実

ここでちょっと「アルガンツリーの歴史」をお話したいと思います。

“鉄の木”とか“モロッコのオリーブの木”、Argan (ベルベルの方言)、アルガンツリーなどと呼ばれているアルガンツリーの歴史は、数世紀前、まだモロッコ沿岸とカナリア諸島が繋がっているといわれていた時代までさかのぼるそうです。

アルガンツリーはもともとモロッコの大部分に生えていたが、環境に影響を与えた氷河の変化により、南西地方に植生が限られるようになりました。今では、モロッコ南西の乾燥または半乾燥気候の地域にアルガンツリーの森林地帯があるだけで地球上ほかには生息していないようです。

この木ははるか昔から知られており、10世紀のフェニキア人が大西洋沿いの交易所で自分達が作ったオイルを使っていたころから、もう木は存在していたといわれています。

1219年、エジプトの医師Ibn Al Baythar氏が、“ とげが多くそこそこの高さの木で、アーモンド大の実をつける。その中のナッツを粉にして抽出したオイルは料理に用いられている”と著書の中でアルガンツリーとオイルの抽出方法について書いてるそうです。

気が遠くなるような長い歴史がアルガンの木にはあるようです。そんな木が今世紀で絶滅するのは困りますよね!



アルガンの実の殻と果肉をはずす
乾燥したアルガンの実の殻と果肉を機械で外をはずしているところです。この機械に3回かけます。一度ではなかなか外れないようです。

この共同体でなく各家庭でも、果実の収穫を年に数回して、果実の核から油を採るのですが、今も伝統的な方法で行われており、生の果肉の部分は乾燥させ、乾季の間の貴重な動物の飼料となります。

果肉を取り除いた木の実の殻は燃料として使われ、その火で果実の核の仁を炒ります。またパンを焼くと風味がよくなります。本当にモロッコの南の地方で生活に必需品のオイルですね!

オイルは料理に重宝します。香ばしい風味で、とりわけサラダとの相性は抜群です。

パンにアルガンオイルをひたして食べる方法は、朝食にぴったりですし、それでコレステロール値を下げる働きのある不飽和脂肪酸(炭水化物や焼き魚にも含まれる)の1日に必要な量が摂取できます。

薬として、ベルベル人にとっては、胃腸の調子が良くない時、心臓の病気、血行不順、不妊にも効くとして、アルガンオイルは欠かせない薬です。



機械を上かわ見た状況
上から見たところです。とっても簡単な機械ですが手ではずすにはとても硬い皮なのでこの機械は大変優秀です。

このように手間をかけた貴重なオイルは、次の用途に使われています。

  •  細胞に栄養分を補給し、老化と乾燥肌を防止
  •  細胞間の要素の品質を向上する細胞内の酸素の動きを活性化
  •  髪をしなやかにする。
  •  割れたり不健康な爪を強化
  •  にきびや水疱瘡の治療
  •  高コレステロール値や心臓病の予防にも効果的
などいろいろなHPや本そしていろいろな国のアルガンオイルの紹介文には上記のようなことを書いています。



話をアマル「AMAL」に戻してみます。

ここで作業をする女性たちです。いろいろな年齢の女性たちが働いています。皆さんそれぞれ自分のポジションでそれぞれのペースで作業をしています。伝統的な作業で実から仁核を取り出す作業がこの女性たちの仕事です。

今は色々な方法が考えられるかも知れません。しかしアルガンの木を守っていこうと思うと地元の人たちに経済効果を与えて自主的にアルガンの木を守るのが一番とシャルーフ教授は話されました。

地球の温暖化の問題とともに砂漠化してほかの木が育たないためこのアルガンの木で燃料にしたり家具を作ったり、またヤギの放牧で木がヤギの重みで痛み枯れたりとさまざまな要因でも木が絶滅しかけています。だから経済効果があると木を切らず、今では村の男性も木を守り増やすことに協力しているそうです。

そのため機械化でなくこの女性たちに高収入を与えて毎年1人10本木を植樹することを義務ずけているそうです。そしてこの「AMAL」の収益の10%をユネスコの保護作業に使っているそうです。



殻を石で割る
石の台の上に右手で石を持ってこのにアルガンの種をはさみ割っていきます。

中にある仁核を出していきます。高齢の女性の方が本当に仕事が速く驚きました。

指にそれぞれ工夫して石から保護するために指サックをしています。

それぞれ違ったもので指の保護をしていました。生活の知恵ですね!



民族衣装で働く女性たち
皆さんそれぞれのペースで作業しています。
この日は日曜日で多くの女性が私たちのために出かけてきて作業風景を見せてくれました。感謝!です。

普段日曜日は数人でこんなに多くの人たちは平日のみだそうです。



むき終った白い小さな実
むき終った実は白い小さな実です。前の赤い枠のかごの中に入っているのが仁核です。

右の向こう側にあるブルーで白い枠のあるかごの中にベージュ色の小さなバケツがあります。このバケツ一杯が1kgでこれに2杯 約2kgが一日平均の仕事量だそうです。

早い人と遅い人で働く時間は違うそうです。出来高払いなので朝8時から夜7時までこの作業場は開けていて仕事の早い人は、早く帰るそうです。

左上の人は大変早くすべて割って身の中の不良品や割れたカスなどを選別しています。前の年配の女性は私が見ている限りでは大変早く熟練に思ったのですがその方より早いとは!!能率給というのは人の技術を向上させるかも知れませんね!

早く終わって早く帰る、たくさん働いて高収入を!茶摘の人たちも重さで賃金が決まるのでとても早く的確に茶葉を摘んでいたのを思い出してしまいました。 

写真が多くて紹介しきれず次に続きます。ごめんなさい!



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