■ 第四回 特別編 モロッコ アルガンオイル T

2004年の冬は本当に寒いですね!普段はクリーム類を体につけない私ですが、例年、乾燥する冬には保湿性のあるローズウォーターや深海鮫からとったスクワラン オイルで肌を乾燥から守っていました。今年は昨年末に輸入販売を始めた「アルガンオイル」のおかげで肌がしっとりとして大変調子よく驚いています。

もともとアレルギー体質で化学製品に弱く20才過ぎたころからハーブに興味をもち、いろいろなハーブティを飲んだり、ハーブで作られた化粧品を使ったりしていました。そんなハーブやお茶への関心から1987年、南フランスにハーブを訪ねて旅をしました。ヨーロッパのお茶やハーブに心を奪われ、帰国してから”La melangee”を開業させました。

メランジェ関係の仕事で、いろいろな国を訪問すると、近代的な化学製品でなく昔からの伝承品のものが今なお普段の生活に使われていて、健康に良いものに出会います。2001年4月に行ったモロッコで出会ったアルガンオイルもそのひとつです。1995年イタリアのトスカーナで出会って感激したオリーブオイルは毎年輸入して好評いただいていますが、その次がアルガンオイルです。メランジェはお茶を通じて世界の文化や喫茶文化、食文化を紹介したいとショップを開きました。ティクラブという教室でいろいろ紹介してきましたが遠くて店に来ていただけない方にもご紹介していきたいと思います。

お茶にまつわる旅は本編でこの特別編では、お茶以外のものをご紹介させていただきますね! では、第一回はモロッコのアルガンオイルです。



2002年10月、モロッコの南部にあるタルーダントという町に出かけました。

この町はアルガンオイルの有名な町で途中アルガンの木が植えられている林を抜けて町に行きます。マラケシュから車で数時間、こんな山や谷を車に揺られながら数人で出かけました。

普通モロッコ旅行ではマラケシュより南へはなかなか行かないのですが2001年4月にカサブランカで買ったアルガンオイルに引かれて産地をぜひ見たいと特別に出かけることにしたのです。



タルーダントの町には2つのマーケットがあります。ひとつはアラブマーケットで、もうひとつはベルベルマーケットです。このアルガンオイルの店はベルベルマーケットにあります。

ベルベル人とはアラブ人が入ってくる前から住んでいた先住民族のことでその人たちをアラブ人がベルベル人(野蛮人)と呼んだそうです。

オイルは量り売りで売られています。南仏のオリーブオイルなどもそうですが、地元の人たちが使っているのでエコロジックでいいですね!前に並んでいる黒い丸いものは絞りかすでこれは家畜のえさとして有効利用されます。



市場のオイル屋さんから紹介していただいた製造者のお家。

屋上で薪を使ってアルガンの種の中の仁核を炒っています。

この女性はガスや電気でなく木を燃料とした炎で炒りつけたほうが風味もよくおいしいと断言していました。

確かに薪の火とガスの火では違います、陶器の焙烙(ほうろく)のような器に仁核をいれて炒りつけています。



上の穴から炒った仁核をいれ、石臼で挽きます。ちょうどゴマ豆腐を作る時のゴマペーストのような状態です。

多くの人はアルガンオイルの香りをごま油のようだといいます。確かに炒った油というのは東洋人の場合ゴマを連想させます。しかしヨーロッパの人たちはマカダミアナッツやピスタチオのような香りといいます。同じにおいだというのに、その表現の仕方が違うのは今までの食文化の違いでしょうね!

たとえば最近イタリア料理でおなじみになったハーブ、ロケットを日本人はゴマの香りといいますが、ヨーロッパではアーモンドの香りといいます。

いまフランスの3星レストランでは、いろいろな味に深みが出ると注目されているオイルです。



アルガンの実は中に種がありまたその中に仁核があります。それがこの白い種のようなものです。

良品と不良品を手で選別しています。コーヒー豆も同じで、良くないものが混じったままミルで挽くと全体の味を落とすので炒る前に選別しています。この作業はまだ大変ではありませんが実の中にある仁核を取り出すのが大変でいまだに機械化は難しいとか。

殻が固く仁核が小さく柔らかいだからです。



ペースト状のアルガンを大きな器に入れ水を混ぜて攪拌していきます。

どんどん混ぜていくと固形物と油に分かれていきます。これは他の植物油でもある方法ですが乳化させていくのです。

人間の知恵はすばらしいですね!固い木の実を割ってそれから油をとる。

絞るのではなくて、水と混ぜて乳化させて油をとる。ちょっと驚きです。



塊と油にどんどん分かれていって、固形物のほうは先ほど市場の店で紹介した黒い丸い塊となり、家畜のえさにします。

ちなみにこの塊を持って帰って来ましたが、秋だったというのに湿気のある日本では1週間ほどでカビが生えました。まだまだ栄養分が残っているのですね!

この女性の肌と手はピカピカで毎日オイルを手で製造しているおかげで大変きれいな手でした。

実はビタミンEがオリーブオイルの4倍も含まれていて、皮膚細胞の老化を防いだり、美容にも大変いいオイルです。



アルガンの実。青い実ですが、だんだん熟すと黄色くなってきます。

木には大変とがったとげがあり柑橘類の木のとげより長くシャープです。よほど実を守りたいのでしょうね!

その上とても固い殻で覆われていて石の上にのせて上から石でたたいて割らないと中の仁核を取り出すことが出来ません。



アルガンの実は、オリーブの実ような形をしています。

この実をヤギが好んで食べます。放牧したヤギは木に登って実を食べ、 ヤギの胃の中でも溶けない硬い殻に包まれているので家に帰ると種を吐き出します。

不思議なことにこの仁核は食べるととても苦いのですが、オイルになるとおいしいです。

このアルガンの木は雨が降らなくても木自身が葉を落とし冬眠状態を作って乾燥気候に耐え抜くそうです。その上水を求めてどんどん地下深く、15m下まで根を伸ばしていくのでモロッコの南部の砂漠化を防ぐのに貴重な木でもあります。



ヤギが大変この実を好むのでこのように木に登って食べます。

長い針のようなとげがあるのに上手に上のほうまで登っていきます。木がヤギの重さで傷んでくるの枯れていく木もありました。

次回は2003年秋に行ったアマルという女性集団のアルガンオイルの製造やモロッコの素敵な女性を紹介したいと思っています。



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