モロッコミントティー

■ モロッコのお茶

ミントティー
お茶は大昔から自分達の文化の一部・・・たくさんのモロッコ人はそう言うでしょう。彼らがお茶を大量 に飲むのは、モロッコでもっとも高い位にあった預言者が好んで飲んでいたからです。

預言者は、たくさんの贅沢品を扱う責任を担っていましたが、お茶はそれにはあてはまりません。お茶は19世紀半ばにイギリスから渡ってきたものです。それを積極的に取り入れ、イギリスとの味覚のギャップをうめていったのです。いまではお茶以外のものは飲まないという人さえいます。自分達の生活に重要な位 置を占めていき、お茶を出したり飲んだりすることに儀式的な方法が取り入れられ、発展していきまいした。それは「もてなし」というアラビアの良き伝統を証明するもの、と賞賛をうけました

モロッコのお茶はミントと一緒に濃く抽出します。ミントの香りは、モロッコ料理の強烈でぴりっとした匂いの重要な要素でもあります。

お茶は健康によく、その香りもミントハーブティー(モロッコで昔から飲まれていた、ミントにお湯を入れて抽出したもの)とうまくマッチしました。外国の食材を自分達の文化に取り入れ、それをモロッコ社会の中心になるまでに持ってきたのです。住宅街では、いろんなにおいが複雑にからみあっていますが、そこに幻惑的で爽快なミントティーの香りも混じっています。

■ History

英国は、モロッコの豊かさに時折ねたましげな目を向けていたかもしれません。しかし英国は茶を伝えました。茶はモロッコで確固たる地盤を築きました。もともとは、価値ある商品が供給過剰になり「やけ」になって、市場で売ってやろうと直感で考えた末にうまれたものでした。

1854年、英国の商人は、クリミア戦争のために足止めをくわされ、イライラしていました。そして、彼は中国から仕入れてきた茶を、英国へ持ちかえらず、モロッコのタンジールとモガドール港へ降ろしてしまいました。それが巨大マーケットが誕生した瞬間です。モロッコミントティーを作るのに使用する茶は、緑茶(ガンパウダー)といい、最も中国的な茶葉です。袋詰めのその茶葉は、町中の小売店やスーパーで売っています。

■ Preparation

ミントティー
茶葉だけでミントティーは作れません。ミントティーを入れるには、他に3つの主要な材料_ミント、砂糖、沸かしたてのお湯が必要です。まずお湯をティーポットに入れ、ポットの中をゆすぎます。ポットを温めて、中にあるゴミを取り除くのです。茶葉を入れ、上から沸騰したお湯を注ぎ、1分ほどむらします。その後ひとつかみのミントをポットにこぼさないように入れます。

次に砂糖を入れますが、モロッコ人の好きな円錐形に固めた砂糖を砕いて入れます。(この砂糖は角砂糖やグラニュー糖と味が違います。そんなに美味しいものではない。)砂糖を入れたら3分ほどそのまま置き、軽くかきまぜます。

もちろん他にもいろんな方法があります。まず、人によって濃さが違います。茶葉をたっぷり入れてミントティーの栄養価を高めて飲む人もいれば、茶葉は少なくしてミントと砂糖を多めにする人もいます。私はこれまで一度だけ、水っぽいミントティー飲んだことがあります。マラケシュの絨毯売りの店に連れられていった時でした。一口飲んだだけでそれとわかるまずいお茶でした。そしてその経験から、2つのことを学びました。買う気がないなら、最初からお茶を断ること。もうひとつは、出されたお茶がまずければ、品物にもご注意を。

ミントティーは砂糖を大量に入れます。甘いものが苦手なら、砂糖の量を減らしてもらいましょう。たいていお茶を入れる前に甘さの好みを聞いてもらえますが、現地の人と同じものを試してみたいなら、甘くて濃い味を覚悟のこと。

このミントティーは田舎の方へいくほど、砂糖をたくさん入れ、甘くして飲んでいます。田舎では農作業の休憩時間に、パンの耳やオリーブと一緒にお茶を飲み、砂糖からエネルギーを補給しているのでしょう。都会のフェズでは、社交的な場やおいしいものを食べる機会に、より洗練されたものとしてお茶をとらえています。また油っこい料理の時は砂糖の量 を控え、消化を促す食後酒のような役割を果たしています。

円錐形をした砂糖は、雑貨屋で簡単に手に入ります。けれども最近では、郊外に大型スーパーマーケットがどんどん進出しており、大部分のモロッコ人はそこでまとめ買いしています。円錐形の砂糖は、密度が濃く精製されて非常に高価です。ディナーに誘われた時や結婚式に呼ばれた時に、おみやげとして持っていきます。この砂糖は、モロッコでは非常に尊い形とされており、荘厳な雰囲気も漂わせています。店で売っているものは、紫の薄紙に包まれています。(スーパーでは紫のセロファンの時もあり)

砂糖を使うときは、上手に割ってミントティーの中で静かに溶かします。砂糖の量 は目分量で決めていますが、3杯分で約25gから30gの砂糖の量がいいでしょう。好みによって調節してください。

■ Varleties of Tea

他のお茶も都会のスーパーで売っていますが、やはりミントティーが一般 的で、どこでも手にはいります。もちろんそれに必要な材料も。やせたロバが、毎日いい匂いをさせて荷台いっぱいのミントを引っ張っています。こうしてどこの市町村でもミントが売ることができるのです。ミントはモロッコ中で栽培されていますが、時に山間部でよく育ちます。寒い気候と温かい日光の組み合わせがミントの成長に合っているのです。とはいえ、一般 家庭では小さな土地や庭で、それがなくても小さな容器ででも、いつでも使えるようミントを家庭で栽培しています。スペアミントが特に好まれています。

南の地方では、サフランをミントティーに加えます。サフランはモロッコ料理のベースになるもので、いたるところで栽培されています。クロッカスの花が咲いた時に(つまりサフランの細脈が出た時)、サフランティーを飲みます。これは、ティースプーン1杯のサフランにお湯を入れ、ミントと一緒に抽出します。ミントを入れない時もありますが、砂糖はたっぷり入れます。しかしサフランは貴重で、非常に高価であり、広く使用されていません。

■ Tea Etiquette

ミントティー
お茶は食事とともに、モロッコでは上流階級や仕事上の交流会に欠かせないのです。お茶だけの時もあれば、モロッコのお菓子やビスケットと一緒にモーニングティーやアフタヌーンティーを楽しむこともあります。また、食前、食後に飲むこともありますし、まれに食事と一緒に楽しみます。胃痛や腹痛にも効くといわれています。田舎では、焼いたパンにハチミツやオイルをつけたものやオリーブの実と一緒に、お茶をいただきます。
ミントティーを飲むときは、装飾をほどこした小さいグラスを使い、上にミントの葉を飾ります。ティーポットは、マンチェスタースタイルと呼ばれるイギリスのぼってりした形に円錐形のふたのついたものを使います。バラードと呼ばれています。

ポットはたいて金属製で、裕福な家庭では銀製のものを使います。喫茶店では通 常アルミ製です。市場へ行けば、アルミ製のポットは簡単に安価で手に入ります。そのポットが、長年の間、すがすがしい香りのおいしいミントティーを作り出してきたのです。

ティーパーティーや食前にお茶を儀式として出す場合、4本脚のついた銀のトレイにティーポットをのせ、まわりにミントと砂糖と茶葉を入れた八角形の銀器をのせて持ってきます。あぐらをかいて座り、サーブする人は手早く材料を混ぜあわせお湯を注ぎます。数分後、1、2回ほどかき混ぜ、高い位 置から小さなグラスへ注ぎ入れます。最初の一杯は、ポットに戻します。それから同じようにしてグラスへ注ぎ、それぞれのグラスにミントの葉を飾ります。

身分の高い人は、ティーパーティーや食後にミントティーを3杯オーダーします。でも普通 の人がレストランで飲むのは、1杯だけです。大きな音をたてて飲んだほうが、おいしいというサインになります。水分と取りすぎると食事の妨げになるので、食事と一緒に飲むことはありません。

お茶会がある場合、お菓子やビスケットが出されます。お菓子を勧められているのに遠慮したら、目の前に山のようにお菓子を並べられるでしょう。お菓子は拒否できないのです。おいしかった気持ちを表すには、出されたお菓子は全部食べるようにしましょう。  喫茶店-たいていカフェを呼びますが-モロッコにはたくさんあります。フォーマルなレストランを除けば、お茶は自分で入れるようになっています。(食事時には何か食べるものを注文するように)

お茶は儀式のファンファーレなどなく、ひっそりと見えないところで準備されることもあります。他にも、茶葉とミントと砂糖をまずポットに入れ、弱火(炭の燃えさしなど)に数分間かけてから、お湯を入れる方法もあります。町を歩いていれば、汚い道や広場の両側で、シンプルなティーセレモニーをいたるところで見かけるでしょう。大切なのは、金属のティーポット、高い位 置から注ぐこと、グラス、活気、最初の一口を音をたててすすることです。お茶を飲むことはリラックスすることです。誰も走りながら飲んだりしませんよね。  カフェやレストランでお茶を頼んだら、自分で入れる必要はありません。ミントティーが入っているティーポットとグラスを持ってきてくれます。

■ 番外編:To a tea

モロッコ人はどうしてこんなにお茶に夢中なのか?仮説では、イスラム世界で、唯一許されている嗜好品だからではないか?と言われています。アルコールや他の薬(ドラッグ)は厳しく禁止されている国ですから。しかもお茶はコーヒーなどに比べて安価で、どこでも手に入り、簡単に入れられる利点があるからではないでしょうか。

またミントティーは体に活力やエネルギーを与えてくれます。飲んでいると、気分がハイになってきます。体も温まるしリフレッシュ効果 もある。寒暖の差の激しい気候にぴったりです。

ミントは胃やさしく、消化を助ける働きがあります。スパイシーで油っこい食事をするモロッコ人にぴったりです。さらに、ミントティーを作るには、必ず沸騰したお湯を使いますが、これは水を安全に飲めるということでもあるのです。

Lonely planetの"World Food MOROCCO"より抜粋


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