TEA and COFFEE Trade Journal

■ 2000年5月号掲載記事 /新しい紅茶とワインの友好提携

Introduction:

紅茶とワインが体にいいという近年の科学研究をうけて、ブルックボンド社とフランスのボルドーワイン地区が新しく提携を結びました。すでに評判のように、紅茶とワインにはフラボノイドが含まれており、それが活性酸素を追い出す抗酸化予防にきわめて効果 的だといわれているのです。

ブルックボンド社とボルドーは、共同で教育プログラムを開催する予定で、科学的情報と技術的な専門知識を共有し、2つの飲物に潜在する利点を見つけようとしています。

ボルドーのスポークスマンは、次のように話しています。「互いの国を代表する飲物にはかなり違いがあります。しかし抗酸化作用が非常に高いところや、たくさんの人に毎日楽しまれているというところは、意外にも一致しています。フランスワインがイギリス紅茶と密接に関ることになるとは驚きかもしれません。」「しかし、この提携は必ずいい結果 をもたらします。」

1999年10月4日、新しい協約がボルドーで一番有名なグランド・ラローシェ城の庭で調印されました。そして、教育とマーケティングの共同プロジェクトがすぐに始まります。その中には、マクラクラン氏が、抗酸化作用の利点を漫画で描いた展覧会、イギリスのワインショップでの紅茶とワインの試飲会、最新の科学的情報の共有なども含まれています。これから予定されているボルドーワインのイベントでは、ブルックボンド社の紅茶がすべて出されるし、ブルックボンド社も同様のイベントでボルドーワインを出す予定です。

提携の新しい船出:

この提携にあたって開催されたイベントは、ジャーナリストや双方の組織の代表者が関っており、ボルドーワイン協会クリスチャン・デルピュ氏の歓迎の辞で始まりました。

彼は証明されているワインと紅茶の健康に与える影響を認める一方で、フランスとイギリスの一風変わった業務提携を、なかなか面 白いものと考えています。しかし彼は、「紅茶の作法なんて、アテキーヌ地方をフランスに取り返されてくやしがっている島の、ただの奇行だ」と、長い間紅茶を認めなかったとも告白しています。(1453年の100年戦争で、フランス軍は再びボルドーを含むアテキーヌ地方を征服した。こういうわけでイギリスのアンリ・プランタジュネがエリオノール妃と結婚してイギリスが獲得した土地をフランスが奪いかえした経緯がある)デルピュ氏はこの全く異なる2つの飲み物の類似点を強調し、「紅茶とワインは、一番大事な人間の儀式です。そこには歴史や文化があり、儀式のように楽しまれています。紅茶は英国海軍や大英帝国を思い出させ、同様にスパイス貿易や荒波をも思い起こします。さらに紅茶は裕福な中流家庭の楽しみのシンボルでもあります。またワインを飲むことは、フランスの地方や、自由主義フランス、何世紀にも渡って作ってきた美しい景観を象徴するものです。古いボトルが珍重されることもありますが、ワインを飲むことはずっと前から貧しい人々の心をなぐさめるものでした。年代ものが重要だといった古いならわしが、最近また取りあげられていますが、それはあじけない食事に、何か物語をもった飲み物をあわせたくなってきたのです。」

デルピュ氏の歓迎の辞につづき、ブルックボンド社のマスターティーブレンダー、ジョーンズ氏による実演会が行われました。彼は32年間、紅茶のテースティングとブレンドを行ってきました。ジョーンズ氏は、1968年に見習いとして仕事を始め、インドとスリランカで仕事をし、その後ケニヤのモンバサで2年間紅茶貿易商として働きました。

次に、抗酸化剤とフラボノイドに特に詳しいジェニー・ポーラー栄養学博士が、ワインと紅茶の健康と栄養面 の特徴について講演を行いました。その中で博士は、「紅茶と赤ワインには、他の抗酸化作用があるビタミンCと比べて、最高4倍の坑酸化作用があります。心臓血管の器官を保護する効果 があるということも科学的調査の結果が示しています。」と語りました。

フラボノイドと健康:

この記念イベント中に配布された資料の中で、たくさんの専門家が、なぜ今紅茶とワインがそんなに健康にいいと考えられているのか、説明しています。

「フラボノイドは植物に含まれる天然物質で、果物、野菜、赤ワインや紅茶のような飲み物に、多量 に含まれています。フラボノイドはポリフェノールとも呼ばれていて、強い坑酸化作用と反炎症性をもち、それがCHD(冠状動脈性心臓病)などの慢性病予防に効果 的だと言われています。」

「この10年間、たくさんの国際的に有名な研究所で行われてきた詳細な研究から、フラボノイドは自然界にある物質で一番坑酸化作用が高いということがわかりました。自然界には4000ものフラボノイドがあり、食用フラボノイドとして大きく5つのタイプにわけられ、それぞれフラボノール、フラバノール、アントシアニン、ハイドロキシナメイト、フラバノンという名がついています。」

「赤ワイン、緑茶、紅茶は特にフラボノールという成分が多く含まれています。果 物と野菜は組成している成分がさまざまで、ベリー類からはアントシアニンが、果 実類にはハイドロキシナメイトが多く検出されています。果物と野菜には、ビタミンC、E、カロチノイドといった大部分の重要な食物栄養素が含まれているのです。」

ブルックボンドストーリー:

アーサー・ブルックは1869年、マンチェスターにブルックボンド一号店をオープンしました。そこで紅茶とコーヒーと砂糖をカウンターに並べ、現金で販売しました。その当時、ほとんどの人はクレジットで物を買い、常に借金状態だったことを考えると、この販売方法は新しいやり方でした。また0.5ポンドと1ポンドの2種類の紙袋に紅茶を詰め、初めて袋入りで紅茶を販売しました。さらに、流暢な散文や自分の紅茶のブレンドを「香り高くコク深い」とか「芳醇、ジューシー、かぐわしい」といった広告で、宣伝しました。こういった方法で販売広告をする先駈けとなったわけです。ブルックボンド社は1930年、PG Tipsという名のブレンドを発表しました。紅茶は健康に不可欠という考えをもとに、「消化機能を助ける」というラテン語からその名がつけられたようです。

1930年代と1950年代にはさまざまなブレンドを創り出し、1985年にはワンカップ用のティーバックを発売し、さらに1996年にはピラミッド型の、簡単にお茶が入るようにした新しい形のティーバックを発売しました。1999年は新しいフランス、イギリスの友好提携に加え、ブルックボンド社創立130周年記念の年でもありました。その年、ブルックボンド社は、4種類の緑茶、シングルエステートでブレンドしていないスリランカとインドの紅茶を揃えたティーバーを2店舗オープンしました。

ボルドーワイン:

1世紀には、厳しい冬にも耐えられる新種のブドウの木が発見され、ボルドーワインの歴史が変わりました。12世紀中頃から15世紀中頃にかけては、イギリスとフランスの間で安定したワイン貿易が確立し、17世紀にはオランダや北ヨーロッパ諸国にもワインを輸出するようになりました。ボルドー地区では、蒸留してブランデーにするための辛口、やや甘口ワインも供給するようになりました。カリブ諸国との貿易も18世紀には増えてきて、フランス革命までボルドー地区は繁栄を極めました。そのころイギリスへのボルドーワインの輸出は全体の10%ほどでしたが、ワインがロンドンの上流階級の間で流行っていることもあり、良質のワインが求められていました。

19世紀になると、うどんこ病というぶどうの病気がワイン畑を襲いましたが、それが鎮火し、後にボルドー地区は好景気にわきました。ジロンドのもっとも有名なシャトーのいくつかが格付けられました。(メドック、ソーテルヌ、グラーブ地区のシャトーオブリオンなど)。産業革命で自由貿易が発展し、ボルドーワイン醸造家やそれを売る側の努力の結果 、ボルドーワイン繁栄の時代となり、1865年から1887年までピークを迎えました。

20世紀になり、ボルドーは新しい危機にさらされました。まがいもののボルドーワインが広く出回り、価格が下落したのです。ボルドーワインを守るため、ジロンドワインプロデューサーはあちこち奔走し、1911年に新しいワイン法律を作る手助けをしました。この法律は初めてワインの呼称に境界線をしき、ジロンド以外で作られたワインにボルドーという名を付けることを禁止するものでした。この品質管理の概念は、地理上の原産地も加えられ、今日の包括的appelation d'origine controllee(原産地呼称統制法)ができあがりました。現在AOCワインはボルドーワイン製品の97%を占めています。1956年以降グラーブやサンテミリオン地区も新しく格付けされ、1956年の厳冬のあと、世界中のワイン需要の高まりに押されるように、製造者は徐々に商業に対する活力をとり戻しました。

マスコミとのかかわり:

ブルックボンド社とボルドーの提携に、世間の人がもっと興味をもってもらい、提携が成功するようにと、イベントやプロモーションにフランス人俳優、マックス・ドゥーチンを起用しました。彼は、ルノークリオのコマーシャルでパパ役を演じる人としてイギリスでは知られており、フランスでは俳優として長い間際立った功績をあげ、特にチェーホフ、ストリンドベリ、シェークスピア劇での演技が有名です。また彼は以前より紅茶とボルドーワインの愛飲者であり、パリにある自分のラグビーチームでもビールより紅茶を飲むほうがいいと、チームメイトにすすめてきました。

この提携をつうじて、紅茶とワインがもっとたくさん飲まれるようになり、また新しい消費者を開拓していきたいと、両者は考えています。2つの飲み物はイギリスとフランスの文化的歴史のシンボルだという事実が、さらにこの提携にインパクトを与えてくれることを期待しています。

本文は『TEA&COFFEE TRAE JOURNAL/vol.172/No.5 2000年5月号』より・・・

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