A Tea Tour of Japan

■ Introduction:

私が3月23日、東京の成田空港に降り立った時、これから10日間でたくさんのお茶を飲むことになるだろうと考えていました。しかし、それが私のお茶に対する今までの経験から学んできたものをどのように変え、どれほど魅了されるかは考えつきませんでした。日本へきたのは、英国での紅茶について、全国4都市でプレゼンテーションを行い、セミナーを開催するために招待されたからでした。 そして滞在中は、日本側で招待してくださった方々が、こちらが恐縮してしまうほどの温かさでもてなしていただき、近年人気が高まっている英国紅茶と同様に日本にある伝統的な緑茶文化について、その素晴しさを私にわかってもらおうといろんなアレンジをしてくれました。

■ Japan's green tea consumption:

お茶が体にいいという説が唱えられるようになり、ここ最近日本人は以前よりも緑茶をたくさん飲むようになり、生活の中で重要な役割をはたしているようです。私はたくさんのレストランへ、いろんな時間帯に連れていってもらいました。その中には靴を脱ぎ、予約してある個室で落ち着いて食事をする所がありました。日本式に正座をして座るのですが、私には足を投げ出すようにと親切に言っていただきました。そしてそこで最初に出されたものが、急須に入っている緑茶でした。時には玉露という最高級の緑茶が出てきました。それは濃くてあざやかな色をしていて、信じられないくらい甘い香りがただようお茶でした。その他、煎茶という高級なお茶で、一般的によく店でも出されるもの、喉の渇きをいやすのにほうじ茶というお茶を煎って少し麦のような香りがするもの、煎茶より金色がかった色の玄米茶、これは煎った米が入った少しグレードの低いものですが、こういったさまざまなお茶が店で出されました。  多量の日本茶が食事の度に出され、日本酒やビール、最近日本で心臓病予防にいいと大人気の赤ワインを楽しんだ後に、体や口をさっぱりとさせるためにも日本茶を飲みました。

ティールームでも何種類もの日本茶が揃っていますし、紅茶好きな人や英国風のアフタヌーンティーを楽しんでいる人でさえ、日常たくさんの日本茶を飲みます。缶ジュースやミネラルウォーターと同じように、お茶をベースにした飲みものがたくさんあります。その中にはハーブ入りであったり、無糖、無添加のものもあります。さらに日本のおいしい水でつくられていることが他の飲みものよりもすぐれたところです。私は人生の大半をロンドンの水を飲んで過ごし、来日してはじめてこんなに甘さのあるおいしい水を飲みました。列車の売店や食料品店、自動販売機、駅の売店でも同じ様なお茶をベースにした飲みものを販売していました。

日本人の家に招待されることはまれなのですが、私は今回この機会が幸運にも与えられ、福永氏の家におじゃますることになりました。彼はリプトンという有名なティールームのチェーン店を1930年代に創設した人で、京都の北の方に住んでいらっしゃいます。ご夫婦は温かく私を迎えてくださって、伝統的な小さなお茶菓子(淡いグリーン色で小さな黄色の花が飾られた、豆のペーストに砂糖を加えたもの)を煎茶と一緒に出してくださいました。5分後、それにつづいて大ぶりのボウルに入った抹茶が出されました。抹茶は粉状の緑茶に熱い湯を入れて泡立てたもので、私はそれまで茶の湯の儀式だけに出されるものだと思っていました。しかし抹茶が出されたのはその時だけではありませんでした。私はレストランやティールームと同じように、博物館、茶を製造する会社、茶研究所でも抹茶を飲みました。来月の記事でくわしく書きますが、現在、抹茶は料理や冷たい飲みものやデザートにも幅広く使われているのです。

「Tea and Coffee Trade Journal」1998年6月号掲載記事


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